[恒星物理学] 電子の縮退(electron degeneracy)

Fermi粒子の縮退条件

ファルみ粒子からなる物質密度が十分大きい状態では縮退(degeneracy)という現象が起こります。ここでは簡単のため、電子・陽子または中性子などからなる単原子分子気体を感がましょう。粒子密度Nが十分小さい時のガスの熱運動はMaxwell-Boltzmann分布で表され、理想気体として振舞います。この時、運動量pをもつ粒子の単位位相空間体積あたりの粒子数f(p)は

で与えられます。

量子力学により、位置と運動量からなる位相空間(実空間x運動量空間の6次元空間)の単位体積あたりの、スピン1/2の粒子の状態数は、スピンの自由度が2であることから、2/h^3であることが分かります。一方、Fermi粒子に対するPauliの排他原理により、同じ状態をもつ2つ以上の粒子が存在することが禁止されています。この原理は分布関数f(p)に対して、

…(*1)

という条件が課せられることを意味します。したがって、Maxwell-Boltzmann分布がPauliの排他原理と矛盾しないためには

でなければなりません。この条件がのどこでも成り立つためには、上の不等式でp=0した場合でも成り立っている必要があります。つまり、ガスが理想気体として振る舞うための条件は

…(*2)

でなければなりません。この条件は実空間での粒子密度Nが大きくて、温度が低いときに満たされなくなる可能性があります。このとき、ガスは理想気体の性質からずれ、縮退の影響が現れます。このような状態では、運動量pが小さいところで(*1)式によって、粒子の密度が抑えられ、その分運動量の大きい粒子の密度がMaxwell-Boltzmann分布に比べて大きくなっています。そのため、縮退の効果によりガス圧は理想気体の式を適用した場合よりも大きくなっています。不等式(*2)は粒子の質量が小さい場合ほど満たされなくなりやすいです。そのため、恒星の構造の進化では、電子の縮退が重要な働きをします。

電子に対して(*2)式が満たされなくなる場合は、に対応します。またの関係(は電子の平均分子量を表します)を使うと、電子の縮退が始まる条件として、cgs単位系で

と求まります。例えば、電離したヘリウム核と電子だけからなるガス()で温度が10^8Kの場合、で電子の縮退が起こります。

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