[原子核物理学] r-process

ウランを作るには?

s-processでBiまで元素合成することは学びました。ですがそれよりもさらに重たい、例えばUを作るにはどうすればよいでしょうか。また、s-processでは作られない、中性子の方が陽子より多いような元素はどのように作られるのでしょうか。

s-processは中性子を数千年から数十万年の間に、ゆっくりと原子核に吸わせて起こるものでした。s-processがゆっくりなのだから、今度はより素早く、一秒に一個の中性子を合体させるような早い過程、すなわちr過程(rapid-process, r-process)を考えればよいのです。これはベータマイナス崩壊により原子番号が一つ上がるよりも先に、中性子合体が起こるような過程になります。

したがって、核融合は図のマゼンタ色のような経路を辿ります。

(Arcones氏の発表スライドより抜粋)

 

途中、垂直方向に移動しているのは、そこが原子核中の中性子数の魔法数(magic number, マジックナンバー)になっているからです。それより中性子が多いような原子核は、結合エネルギーが途端に弱くなるため、すぐに中性子を手放してしまうことから、存在し得ません。

そうして次々と作られた中性子過剰原子核がベータマイナス崩壊

を起こして、様々な元素を生み出します。こうしてUなどの元素が作られたとされています。

ではこのような中性子を素早くたくさん浴びせるような、極限の環境とはどのようなものでしょうか。

 

1)超新星爆発

超新星爆発は、中心核のFeが光分解(光崩壊)

されて起こる大爆発現象です。中心核のほとんどがα粒子と中性子に変えられることによって、これが大量の中性子供給源となります。

2)中性子星連星の合体

2017年、重力波を放出することで合体を遂げた中性子連星系に世界中の宇宙物理学者が興奮しました。その重力波源となった天体はGW170817と呼ばれています。この天体からは重力波が観測されただけでなく、可視光・赤外線観測からキロノバ(kilonova)が起こっていることが確認されたのです(キロノバの詳細は別の記事にしたいと思います)。これは中性子星同士の合体によってr-processが起こり、中性子過剰核が宇宙空間にばらまかれます。それが放射性崩壊を起こして、主に可視光と赤外で明るく輝くというものです。この発見は「重力波と電磁波の観測によってもたらされた、マルチメッセンジャー天文学の幕開け」と呼ばれています。

3)核爆弾の実験場

最後は悲しい歴史のお話です。人類が考案した最強最悪の爆発力をもつもの。核融合エネルギーを利用して作られるものです。ビキニ環礁で行われた水爆実験などで、(当時は未知であった)放射性物質カリフォルニウムなどが確認されています。

 

参考文献:

谷畑勇夫, 宇宙核物理学入門

マーカス・チャウン, 僕らは星のかけら-原子を作った魔法の炉を探して-

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