[恒星物理学] 中小質量(8太陽質量より軽いもの)のヘリウム燃焼後の進化

質量がより小さい場合、ヘリウム燃焼後炭素酸素からなる中心核では電子が強く縮退し、中心ではそれ以上の核融合反応が起こらなくなります。中心に電子の縮退したC/O核、そのすぐ外にヘリウム燃焼殻、その外にヘリウム層、水素燃焼殻、さらにその外側に水素を多く含む対流外層たちからなる構造ができます。このような星はHR図上では赤色超巨星の領域にあり、AGB(Asymptotic Giant Branch: 漸近巨星枝)星と呼ばれます。この段階では、ヘリウム燃焼核が熱的に不安定なので、約数千年の周期でヘリウム燃焼が暴走します。この現象は熱パルス(Thermal pulse)またはHelium shell flashと呼ばれます。この段階の進化は高温でのヘリウム燃焼とその生成物の混合が複雑に絡み合っています。そのため、進化モデルの計算には少なくない仮定が必要ですが、その結果によると次のような現象が起こると予想されています。熱パルスに伴って対流層が発生し、核反応の影響がヘリウム層のほぼ全般に広がります。閑静期には対流外層が熱パルスの核反応の領域にまで侵入して、生成物の一部が対流外層にまで混入して表面に現れるようになります。そのため、AGB星のスペクトル解析によると、Ba, Y, Srなどのs-process elementsが明るいAGB星ほど多くなる傾向を持っています。これは、熱パルスの際にs-process(slow neutron捕獲)による重元素形成が起こっていることを示すものです。

AGB星の外層は不安定で脈動し、ミラ型星や半周期変光星などの長周期変光星となっているものが多くあります。また、AGB星の別の特徴は、盛大な質量放出が起こっていることです。放出されたガスからダストが形成されて、星の可視光を遮るために、赤外線でしか見えない状態になったAGB星が赤外線量(OH IR星)であろうことが考えられています。外層の脈動と熱パルスとは質量放出機構に重要な影響を及ぼしていることが予想されますが、理論的に解明するにはまだ至っていません。

AGB段階での質量放出で水素を多く含む外層のほとんどを失うと、表面温度が上昇し、HR図上ほぼ水平に進化していきます。そして表面温度が数万度以上になると、AGB段階で放出されたガスが星からの輻射で電離され、蛍光を発します。これが惑星状星雲(Planetary nebula)であり、星はその中心星として観測されます。その後、表面温度が10万度程度に上昇した後、少しずつ減光すると共に、表面温度が下がっていき、暗い白色矮星へと冷えてゆきます。

白色矮星の典型的な質量は約0.6で、半径は太陽半径のおよそ百分の1です。単独の白色矮星は時間が経つに連れて、冷えて暗くなってゆくだけで、それ以上の変化はありません。冷える速さは暗くなるに連れて遅くなっていくので、我々の銀河の中には銀河が生まれてこれまでに形成された中質量星の残骸である暗い白色矮星がたくさんあると考えられています。実際、太陽近傍の白色矮星の数と明るさの関係から、白色矮星の数が暗いものほど多くなっており、また明るさには加減があることが知られています。それは銀河生まれてから現在までの間の有限の時間の間にその暗さまでしか冷えられないでいるということを示しています。この観測事実を利用して、我々の銀河円盤の年齢を評価することができます。それによると百億年程度であるという答えが出されています。

連星系にある白色矮星は活発な現象を起こす可能性を持ちます。連星系が磁場または重力波によって角運動量失って、系の大きさが現象した場合、または伴星の半径が十分大きくなった場合、伴星の大きさが重力圏(限界ロッシュローブ: critical Roche lobe)をはみ出します。このとき、伴星を構成していたガスの一部が剥ぎ取られて、白色矮星の重力圏に移動します。白色矮星にガスが降り積もると、堆積層の下部は圧縮されて高温になります。その為、ある程度水素を含むガスが積もると爆発的な水素燃焼が起こり、太陽の一万倍以上に増光します。これまで暗くて見えなかった白色矮星が突然輝いて見えるます。この現象を新星(Nova)と呼びます。新星現象は超新星爆発の次にエネルギーの高い現象です。

また伴星からのガスは角運動量を持っているので、直性白色矮星の表面にぶつからず、白色矮星の周りに円盤を作ります。この円盤内をガスが回転する間に、ガスの間で角運動量の交換が起こり、ガスは少しずつ白色矮星に近づいてゆきます。この円盤は降着円盤(Accretion disk)と呼ばれます。降着円盤は時々不安定になり、一度にたくさんのガスが白色矮星に降り注ぐことがあります。このとき、ガスの重力エネルギーが一度に解放されて円盤が明るく輝きます。この現象は矮新星(dwarf nova)と呼ばれます。右図に矮新星の光度曲線の2,3例が示されています。

伴星から白色矮星への質量の移動が効率的に起こり、白色矮星の質量がその限界質量(、チャンドラセカール質量)まで増えると、中心で炭素が爆発的に燃焼を起こし、そのエネルギーによって白色矮星全体が飛び散ります。この現象はIa型超新星爆発と呼ばれています。超新星はそのスペクトルに水素の線画観測されるものをII型、されないものをI型と分類します。Ia型超新星はどの場合も起源がの質量を持つ白色矮星なので、最大光度の値がほぼ同じで、非常に明るい為、遠方銀河までの距離の決定に重要な役割を果たしています。最近ではIa型超新星の最大光度は均一ではなく、減光率が早いほど最大光度が暗いという関係が知られており、遠方銀河までの距離の測定にもkの効果が考慮されています。またIa型超新星爆発により、の鉄が放出されます。これは我々の生活の周囲にある鉄の主な供給源とされています。

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