[恒星大気の物理学] 自転の効果

恒星の自転のように、光子の平均自由行程よりも長い距離のスケールの運動は、発光粒子と吸収粒子との間の速度差をもたらさず、吸収量、つまり吸収線の等価幅には影響を及ぼしませんが、吸収線の形を変化させます

恒星は自転しているため、表面の各点は我々に対してそれぞれ異なる視線速度を持ちます。そのため、我々の観測する吸収線は、それぞれの視線速度に対応するdoppler shiftを受けた吸収線の重ね合わせたものです。

自転軸をの方向とし、我々の方向をとする球座標で考えましょう。自転角速度を、星の半径をとすると、()で表される星の表面の各点での自転速度は

であり、視線方向と自転軸とが垂直(equator-on)だとすると、視線速度は

となります。自転軸をz軸、我々の方向をx軸とする直交座標系で、

なので、星の表面でyが一定の部分が視線速度一定となっています。つまり星の表面を平面に投影したときに、平行な直線上で視線速度が一定となっています。

上記の議論では自転軸と視線方向が垂直であると仮定しましたが、一般に自転軸と視線方向のなす角度をと書くと、視線速度は上の値にをかけたもので

のように表すことができます。ここでで、星の赤道での自転速度を表しています。また、yは星の半径Rで規格化されているとします。

自転を無視したとき、恒星表面のどこから出てくる光に対しても、ある吸収線の輪郭は同じでのように表されるものとしましょう。このとき、観測される吸収線内でのresidual fluxは

となります。ここではx軸方向(視線方向)となす角で、は星の表面を平面に投影した時の面積要素を表します。

自転がある場合、星の表面の各点が我々に対し、視線速度で動いているので、各点での吸収線の中心の波長は

のようにシフトします。ここで

のように定義しました。このとき観測される吸収線内でのfluxは

のように表現されます。はlimb-darkening parameterをと書いて

のように表すことができます。

ここで球座標から、投影面上での直交座標(y, z)に変換し、

のように表しましょう。このときの座標は星の半径で規格化された座標です。球面の積分を投影面での積分

に変換すると

のように書くことができます。途中、として計算をしました。

一方、continuum fluxは

となります。したがって、吸収線内のresidual fluxは

のように表すことができます。ここで

のように定義されます。上の式は、星の表面の各点での吸収線をその場所の視線速度によるdoppler shifだけ波長をずらして積分することを表しています。に比べて、吸収線の本来の幅が非常に狭い場合、をデルタ関数で近似すると

となります。ここで

のように定義しました。下の図はの形を示しています(実線)。Dashed lineはlimb darkeningを無視した場合の形です。limb darkeningによって、視線速度が大きい部分の寄与が小さくなっていることが見て取れます。

高速自転星のスペクトル線は自転によって広がり、吸収線内の各波長が星表面の投影面のy座標に対応しています。つまり、太陽以外の恒星は点光源としか観測されませんが、高速自転星の場合には表面がある程度分解して見えると言えるでしょう。大きな黒点がある場合や星の振動によって表面に温度のムラ、または速度場ができている場合、吸収線の輪郭に、コブや凹み時間とともに移動していく現象が観測されます。この吸収線輪郭変動から、星の表面の模様を再現する方法をdoppler imagingと呼びます。

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