[恒星大気の物理学] 星の表面のリチウム含有量

未解決の太陽リチウム問題。

リチウム原子核は比較的壊れやすい原子核なので、種々の恒星の表面におけるリチウム含有量は恒星内部の構造について有益な情報を与えてくれます。下の図は色々の重元素含有量を持つ(この図では重元素含有量は鉄の含有量で代表されています; )星の表面のリチウム含有量を表したものです。非常に重元素含有量の少ない星でもリチウム含有量の分布の上限は一定値になっています。これは、宇宙が生まれた後すぐにリチウムが生成されたことを表しています(ビッグバン核合成)。その含有量は(ヘリウム、重水素含有量とともに)宇宙に存在するバリオン量を決定するのに有用です。

また太陽表面のリチウム含有量は隕石から得られた値に比べて1/100程度であることが知られています(図のmeteoriticが隕石から、図のphotosphericが太陽表面から得られた値です)。太陽系の隕石と太陽は同じ分子雲から形成されたので、太陽も誕生当初は隕石と同じリチウム含有量を持っていたはずです。隕石のリチウム含有量との大きな違いは、太陽が46億年前に形成されて以後、太陽外層部にあったリチウムが壊されてしまったことを表しています。温度が約200百万度以上だとリチウムは水素原子核(陽子)を捕獲してヘリウムになります。

したがって太陽の外層部にある物質は一度は約200百万度の高温にさらされたことを表しています。太陽外層の対流層の底の温度は約100百万度なので、物質はそれよりも内側まで混合されている必要があります。しかし、この混合メカニズムはまだよくわかっていません。

下の図はヒアデス星団中の主系列星の表面でのリチウム含有量を星の有効温度に対してプロットしたものです。これらの星は同じ分子雲から生まれたので、誕生当初は皆同じリチウム含有量を持っていたはずですが、約6億年が経過した現在ではこの図のように星の質量(有効温度)によって異なる値を持ちます(横軸の温度の目盛りに注意)。

スペクトル型F6よりも低温(小質量)の星では、表面リチウム含有量が有効温度(質量)の減少とともに減少しています。このような低温の主系列星の外層には対流層があり、その層の厚さは表面温度が減少するほど厚くなり、その底の温度も高くなっています。そのため、対流層内をガスが循環する間に表面温度の低い星ほど多くのリチウムが壊されると理解することができます。

ヒアデス星団の主系列星の表面リチウム含有量分布のもう一つの顕著な特徴は、有効温度6700度あたりを中心にリチウム含有量が非常に小さくなっていることである。この程度の有効温度を持つ星の外層の対流層は非常に薄く、外層が比較的静かな状態にあるため、水素よりも重たいリチウムは次第に沈んでゆき、表面での含有量が小さくなります。しかし、表面温度がその領域よりも少し高い星では放射の力が強くなり、重さの違いによるリチウムの沈降を押さえるために、6700度あたりだけでリチウム含有量が小さくなっていると理解されています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Captcha loading...